監修者:管理栄養士 渡邉里英(わたなべりえ)
鮭は朝食やお弁当のおかずなどに重宝する食材のため、冷凍保存しておくと便利だ。美味しさや鮮度を損なわないよう日持ちさせるには、適切な方法で保存することが重要である。そこで、鮭の正しい冷凍の仕方を解説するとともに、解凍方法や焼き方のポイントについても紹介する。
目次
- 1. 鮭を生の状態で冷凍保存する方法
- 2. 鮭を焼いてから冷凍保存する方法
- 3. 冷凍した鮭の焼き方
1. 鮭を生の状態で冷凍保存する方法
鮭は冷蔵保存では日持ちしにくい食材のため、保存を目的とするなら速やかに冷凍に切り替えよう。適切な方法なら、冷蔵で消費期限2日程度の鮭を2週間以上保存することができる。
下処理と冷凍方法
生鮭を冷凍保存する場合は、購入後速やかに下処理を行い、そのまま冷凍するとよい。下処理と冷凍方法の手順は下記の通りだ。
1.生鮭に塩と酒をふり10分ほど置く
(鮭ひと切れに塩ひとつまみ、酒小さじ1を目安にふり置いておくと、水分が出てくる)
2.表面に出てきた水分をふき取る
(キッチンペーパーなどで全体の水分をしっかりとふき取る)
3.生鮭をひと切れずつラップで包む
(空気が入らないよう、ぴったりと貼り付けるように包むとよい)
4.冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存する
(金属製トレーなどを使い、急速冷凍するのが望ましい)
塩と酒をふる下処理には、解凍時に出る液体(ドリップ)の発生や生臭さをおさえる効果がある。また、水分をふき取ることで霜が付きにくくなる。保存期間の目安は2~3週間程度だ。
【解凍方法】
ドリップが出ると旨みや栄養が流出してしまうため、なるべく出さないように解凍するのがポイントだ。最もドリップが出にくい解凍方法は、温度変化の少ない冷蔵庫での自然解凍である。5~6時間程度が解凍時間の目安となるが、半解凍で調理する場合は1時間半程度でもよい。また、袋ごと氷水に漬けて解凍する方法もある。急ぐ場合は、電子レンジ(200W設定)でひと切れあたり約1分の加熱で半解凍できる。
鮭を解凍せずに加熱すると、加熱時間が長引くだけでなく、食味が悪くなったり表面に白濁凝固物(筋形質たんぱく質)が形成されたりする(※1)。見た目も味もよくないため、冷凍鮭は解凍してから調理しよう。
塩鮭の冷凍方法
塩鮭は、生鮭と異なり塩に漬け込まれているため、下処理をせずに冷凍できる。生鮭の冷凍方法と同様に、下記の手順で保存しよう。
- 表面の水分をふき取る
- ひと切れずつラップで包む
- 冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存する
塩鮭は生魚より日持ちしやすいため、保存期間の目安は3~4週間とやや長い。
【解凍方法】
塩鮭の場合、塩漬けにされることで魚肉の保水性が高められている。そのため、解凍時にドリップが出にくいというメリットがある。(※1)
Advertisements
塩鮭は凍ったままでの調理も可能だが、より美味しく食べるには生鮭と同様の方法で解凍することが望ましい。
2. 鮭を焼いてから冷凍保存する方法
焼き鮭を冷凍する場合は、水分が抜けてパサパサにならないよう、ひと工夫するとよい。ポイントも含め、冷凍保存の手順を見ていこう。
冷凍方法とポイント
1.できたての焼き鮭に酒をふる
(酒の目安量は、鮭ひと切れに対し小さじ1/2ほど)
2.しばらく置いて粗熱をとり、ひと切れずつラップで包む
(生鮭と同様にぴったりと包む)
3.冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存する
(生鮭と同様に金属製トレーなどを使い、急速冷凍するのが望ましい)
焼き鮭に少量の酒をふることで、解凍してもパサつかずふっくらとした食感になる。また、食べやすい大きさにカットしてから冷凍すると、お弁当のおかずにも使いやすい。保存期間は約1か月が目安だ。
【解凍方法】
調理済みのため、電子レンジで加熱解凍すればそのまま食べられる。包んでいたラップを外し耐熱皿にのせ、ラップを軽くかぶせる。ひと切れあたり500Wで1分~1分半を目安に加熱しよう。
フレークもおすすめ
焼き鮭は、フォークなどでほぐして鮭フレークにしておくと、おにぎりやチャーハンをはじめさまざまな料理に使える。少量ずつラップに包んで保存袋に入れて冷凍し、必要な量だけ電子レンジで加熱解凍して使おう。
3. 冷凍した鮭の焼き方
Advertisements
生の状態で冷凍した鮭を解凍したら、必ず表面の水分をふき取ってから焼こう。上手に冷凍・解凍してもドリップを完全に防ぐことはできないが、表面の水分をふき取って焼けば臭みをおさえることはできる。美味しく焼くコツについて、フライパンと魚焼きグリルの2パターンを紹介する。
焼き方のコツ
【フライパンの場合】
皮を下にして焼き、表面が白っぽくなってきたら裏返す。その後、蓋をして蒸し焼きにすることで、パサつきにくくなる。
【魚焼きグリルの場合】
鮭を入れる前に、2~3分ほどグリル庫内を温めておくのがポイントだ。温めておいたグリルで焼くことで、鮭の旨みや水分を閉じ込めながらふっくらと焼くことができる。
【裏返すのは1回】
フライパンでも魚焼きグリルでも、鮭を何度も裏返すと身が崩れてしまう。裏返すのは1回のみにしておこう。両面焼きの魚焼きグリルの場合は、裏返す必要はない。
結論
鮭を冷凍保存する際は、生鮭か塩鮭かで方法が異なる。生鮭の場合は塩と酒をふるという下処理をするとよい。また、いずれの場合も表面の水分をふき取ってから冷凍するのがポイントだ。また、美味しく食べるには、基本的に解凍してから加熱することも重要である。焼き鮭を冷凍する場合は、小さく切ったりフレークにしたりするのもおすすめだ。鮭を正しい冷凍保存で長持ちさせて、毎日の食事作りに役立てよう。
(参考文献)
- ※1出典:日本調理科学会誌Vol. 45 No. 4(2012)「冷凍および解凍シロサケ(Oncorhynchus keta)の調理特性と食味」(柴田 圭子、渡邉 容子、早瀬 明子、安原 安代)https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/45/4/45_289/_pdf p56、59