監修者:管理栄養士 渡邉里英(わたなべりえ)
鱧は京都の代表的な食材として知られるが、なぜ京都で鱧が食べられるようになったのだろうか。また、京都で鱧を食べられる旬の時期はいつなのだろうか。本記事では、鱧と京都とのつながりや、京都で味わえるおすすめの鱧料理について紹介していく。
目次
- 1. 鱧が京都料理に欠かせなくなった理由
- 2. 鱧の旬と京都の夏
- 3. 鱧料理を京都で味わう
1. 鱧が京都料理に欠かせなくなった理由
鱧は京都料理(京料理)の重要な食材だが、その多くは京都ではなく瀬戸内海などを中心に水揚げされている。では、なぜ鱧が京都で食べられるようになったのだろうか。
生命力が強い
京都で鱧が食べられるようになった理由は、鱧の生命力の強さゆえといわれている。かつて、冷蔵技術も流通手段も発達していなかった時代、京都では新鮮な魚を入手することが極めて難しかった。しかし、鱧に限っては遠方から京都まで、活きのよい状態で届けることができたそうだ。鱧が食べられるようになった時期は不明とされているが(※1)、京都に欠かせない魚という位置付けになっていったのである。
2. 鱧の旬と京都の夏
鱧の旬は一般的には初夏と晩秋の2回といわれている。京都で鱧を食べられるのは、どの時期なのだろうか。鱧の旬と、京都での鱧の扱われ方について詳しく見ていこう。
旬を迎える時期
とくに魚が傷みやすい夏は、京都では手に入れられる魚の種類が少なく、鱧は欠かせなくなった。鱧は梅雨の終わり頃から脂のりがよくなるといわれ、京都で7月に行われる「祇園祭」の時期が旬のピークとされている。
【祇園祭は別称「鱧祭り」】
祇園祭とは、日本三大祭りの1つである。また、国の重要無形民俗文化財とユネスコ無形文化遺産にも選ばれている。この祇園祭では鱧がハレの料理として振る舞われるようになり、公家から町衆へ、さらに流通がよくなると庶民へと広がっていったという。
Advertisements
江戸後期に出版された「海鰻百珍」では100種類以上の鱧料理が紹介され、骨切りの技術も普及し調理方法も多彩になっていった。祭り客を鱧でもてなす文化が根付いていき、明治以降は祇園祭に鱧祭りという別名が付くようになったそうだ。(※1、2)
【鱧の提供期間は店による】
京都では、5~10月頃にかけて鱧料理を提供する店が多いが、その期間よりも短い店もある。また、水揚げ量の変化などで年によって期間が変わる可能性もある。京都で鱧料理を食べたい場合は、事前に確認しておくとよいだろう。
3. 鱧料理を京都で味わう
Advertisements
骨切りなどの職人技が必要な鱧の調理は、素人には難しい。京都には、鱧料理の名店が数多くあり、自宅では味わえないようなさまざまな料理を楽しむことができる。また、鱧料理は高価だが、ランチは比較的リーズナブルな店も少なくない。
鱧の旬の時期に京都を訪れたらぜひ味わってみてほしい、おすすめの鱧料理を紹介する。
おすすめ料理
- 鱧の落とし:鱧を湯にくぐらせて冷やし、梅肉を添えていただく
- 焼き鱧:串を打った鱧を白焼きや蒲焼きにする
- 鱧しゃぶ:鱧をさっと出汁にくぐらせていただく
- 天ぷら:ふわふわの身の美味しさを楽しめる
- 鱧丼:焼き鱧をのせたものや、鱧のそぼろをのせたものなど、店により異なる
- 鱧寿司:焼き鱧を使用した棒寿司や炙り寿司など、店により異なる
【鱧づくしコースもおすすめ】
さまざまな鱧料理を楽しめる、鱧づくしのコース料理を提供する店も多い。鱧料理を堪能したいなら、コースを注文するというのもおすすめだ。予約が必要な場合が多いため、事前に店舗情報を確認しておこう。
結論
鱧が京都で食べられるようになったのは、魚が手に入りにくかった時代、産地からの長時間の輸送に耐えられるほど鱧の生命力が強いからだった。京都では祇園祭のある7月を中心に、初夏から秋にかけて鱧料理を食べることができる。鱧の旬に京都を訪れた際は、さまざまな鱧料理を堪能してはいかがだろう。
(参考文献)
- ※1、2農林水産省https://www.maff.go.jp/