監修者:管理栄養士 黒沼祐美(くろぬまゆみ)
オーツミルクは、欧米ではとてもポピュラーなミルクのひとつである。普通のミルク、ソイミルクに続く第3のミルクと呼ばれることもある。そんなオーツミルク、日本でも環境問題への関心やヴィーガンへの注目、さらには人気コーヒーショップで見かけることが多くなり、今話題を集めている。一方で甘みがあることから太るという噂も。今回はそんなオーツミルクの真実を紐解いていこう。
目次
- 1. オーツミルクで太る可能性
- 2. オーツミルクはダイエット向き
- 3. オーツミルクの効果的な飲み方
1. オーツミルクで太る可能性
オーツミルクとは、オーツ麦(えん麦)を原料としたミルクのことである。牛乳やソイミルクに比べるとあっさりとしているのが特徴である。そんなオーツミルクは、飲むとほんのりと甘みを感じる味わいが特徴である。であるがゆえに太ると噂されているのだ。ここではその真相を探っていこう。
甘みがある
オーツミルクはそもそも甘みがある。これは原料であるオーツ麦由来のもので明記されていなければ、砂糖が添加されているわけではない。逆に甘みを感じなくなるよう加工してある商品もあるほどである。どちらのタイプにおいても糖質は含まれている。またこれ以外に砂糖を添加して、より飲みやすくした商品も存在する。
太るのは本当?
オーツミルクには甘みがある。さらに糖質が含まれている。それとは別に砂糖が含まれている商品もある。このような理由からオーツミルクが太るという噂が生まれたのだろう。
ここでいったん考えたいのは、砂糖や糖質と太ることの関係性だ。そもそも砂糖や糖質=太るという概念は、少々乱暴である。1日の全体の摂取エネルギーに見合った量であれば、一概に太ると断言することはできない。さらに砂糖を摂取するとストレスを和らげる効果もあるという。(※1)一方、砂糖や糖質、なかでも糖類は確かに太りやすい側面がある。糖質は体内に取り込まれると血糖値が上がる。すると血糖値を抑制するインスリンが登場し、脂肪細胞に糖質を取り込みはじめる。その結果として太りやすくなるとされているのだ。ただ、インスリンが働いている状況下でないと取り込まれない栄養素もあるので、糖質をゼロにすることがいいことだと断言することもできない。この点から、糖質もまた1日の全体の摂取エネルギーに見合った量であれば、単純に太るとはいい切れない。(※2)
厚生労働省が定めている1日の炭水化物(糖質+食物繊維)の摂取基準値は、エネルギーのうちの50~65%相当だ。糖質というと甘いものをイメージする人も多いようだが、主食もこちらに含まれている。たとえば、1日の摂取量が2000kcalの場合、1日250~325gの炭水化物が必要になる計算だ。(※3)
1日に必要な量から摂取量を鑑みる必要はあるものの、オーツミルクが太るとはいい切れない。ただし、水のようにガブガブ飲んだり、砂糖入りのオーツミルクを毎日飲むなどすると太る可能性は否定できないので、その点には注意が必要だ。
2. オーツミルクはダイエット向き
オーツミルクは、むしろ適量であれば、ダイエットに向いているのかもしれない。注目すべきは、βグルカンと呼ばれる栄養素だ。ここではその栄養素を含めて、オーツミルクに含まれる成分や機能について探っていこう。
成分と機能
100mlあたり
エネルギー:46kcal
たんぱく質:0.3g
脂質:1.4g
炭水化物:8.7g
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●糖質:7.2g
●食物繊維:1.5g
カルシウム:120mg
ビタミンB2:0.21mg
ビタミンD:0.75μg(※4)
オーツミルクはカロリーは低めだが、糖質が比較的多く含まれていることがわかる。この点はダイエットという観点からは、注意が必要である。
注目栄養素のβグルカン
オーツミルクの原料は、オーツ麦だ。これは昨今人気のオートミールと同じである。このオーツ麦にはさまざまな栄養素が含まれているが、なかでも注目すべきは水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンだ。βグルカンはコレステロール値を下げる効果があるとアメリカでは広く研究がなされている。日本でも同様の研究が重ねられ、徐々にその効果が明らかになりつつある。(※5)また糖の吸収が穏やかになる食品としても知られており、その点でもダイエットに向いているといえるだろう。
一般の牛乳に比べるとカロリーが低く、食物繊維が多く含まれている。それに比べて脂質は低めである点もダイエットに向いているといえるだろう。また市販のオーツミルクは、ビタミン類が添加され、よりバランスよく栄養が摂取できるよう工夫されているものも多い。
3. オーツミルクの効果的な飲み方
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オーツミルクは栄養満点のミルクである。さらに植物性であり、栽培に必要な水がほかのミルクに比べると少ない点も、環境への影響を考える人から人気が高い。そんなオーツミルクをより、健康的に飲みたい場合はどのような工夫をしたらよいのだろうか?その答えを解説していこう。
1日の摂取量の目安
前述の通り、オーツミルクには糖質がある程度含まれている。このため、ほかの食事のバランスを維持したままであれば、毎食飲むというような摂取方法はおすすめできない。目安としては1日200mlくらいが無難だろう。
午前中に飲むと朝食がわりにも
オーツミルクは、食物繊維を多く含むため、消化に時間を要する。すなわち、体内での滞在時間が長く、腹持ちがよいとされる。午前中に朝食の代わりに飲むと昼まで満足感が持続する。オートミールをオーツミルクで浸して、オーバーナイトオーツにするのもおすすめだ。
間食の代わりに飲む
オーツミルクはほんのり甘いところが特徴である。このため、間食代わりに飲むのもおすすめである。砂糖を加えることなく、甘みを楽しむことができる。とくにおすすめは、午後のおやつの時間だ。
結論
オーツミルクは適量を守れば、太ることはない。健康維持に役立ちそうな栄養素も多く含まれている。とはいえ、ダイエットの基本はバランスのいい食事である。各々に必要なエネルギー量をしっかりと把握して、偏らないよう食べたり、飲んだりすることが重要だ。
(参考文献)
- ※1※2:独立行政法人農畜産業振興機構https://sugar.alic.go.jp/
- ※3:公益財団法人長寿科学復興財団「三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tansuikabutsu.html
- ※4:アルプロ「たっぷり食物繊維オーツミルク」https://www.alpro.com/jp/products/drinks/oat-drinks/oat-original/
- ※5:J-stage「麦類に含まれる食物繊維の栄養生理学的研究」https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/66/6/66_6_311/_pdf